2009年5月23日

リラ


以前、友人に借りた本
ポール・オースターが
結構気に入ってしまった。

そんな時、古本屋で
『幽霊たち』を見つけた。


夜、子どもが夢の船に揺られると、
やっと湯舟につかって水中読書が始まる。

しばし本の中のニューヨークに身を置き、
20代で旅したニューヨークの空気を思い出す。

海外に行くと、自分というものに対する考察が
日本にいる時より強く、いつしかそれが
何も起こらない日常を哲学的次元へと導く。

感じる心と考える脳の狭間を
緩やかに流れる空気のような言葉で

現実と虚構、必然と偶然の境界線があわく滲む頃、
自分と主人公の考えが同一化してくる。

その時はっと現実に戻したのが
本に挟まれていた、小さくてボロボロのリラ。

初めて見るイタリア通貨のリラ(今はユーロ)には
絵本の挿絵のような文字を描いている子どもの姿が描かれていた。
その美しさに見とれながら、この本の前の持ち主に想いを馳せる。

こうした、思索の快楽を味わわせることこそが
ポール・オースターの才能というマジックだと思う。